『小さき者たちの』 松村圭一郎著 [今日のつぶやき(books)]
図書館の民俗学の棚で見つけた本3冊を読んで、
返却するときにまた民俗学の棚を覗いて借りた本。
返却前にレビューを書いておきます。
水俣の水銀汚染による被害にあった弱い立場の人たちの様子が多く紹介されている。
文化人類学者である著者は、アフリカのエチオピアの村に通い、ある家族の歴史や生活を知っていく中で世界の動きが、その家族の営みに影響していくことを知る。「小さき者の生活」がこの世界がどういう姿なのかを映していることに気づく。
そこから著者の故郷である水俣のことを振り返り、日本の近代化が「小さき者たち」にもたらした苦しみや非情さを綴っている。
水俣病のことは、社会科の授業で習った公害の一つとしての知識しかなく、チッソという工場が水銀という毒をそのまま河川に流し、その海に住む魚介類を食べた人々が水銀中毒になった、
ということ以外、私は詳しく知りませんでした。
自作の農作物や獲った魚で生活していた暮らしが、明治になり税金を現金で納めなくてはならなくなり、換金作物がないことで借金せざるを得ず、どんどん貧しくなっていってしまったこと。
昭和に入り、工場ができて大企業が安い賃金でもいくらでも人を雇えてしまうので、ひどい労働環境が改善されることはなかったこと。
近代化は庶民の暮らしを苦しくしてきたことは、この本を読むまで知りませんでした。
水俣病の患者として認可されることが非難されたり、取り下げるよう言われたり。病気で働けず、収入も途絶えたら希望の無くなります。精神を病んでしまう人も出てきます。
本当に地獄のような生活を強いられていたのだと、衝撃を受けました。
ダム巡りでもローカル線旅でも、たいてい工事で亡くなった方への慰霊碑があり、昔の土木工事に事故はが多かったと知っていました。
水俣病のむごさはそういう安全軽視よりももっと酷く、大企業や国が人を人として顧みない扱いをしてきたところにあるとまざまざと感じました。
水俣病は確かにもう過去のことではありますが、庶民の生活よりも国や大企業の論理が優先されていることは、福島の原発事故でも感じています。
今も根本的には変わっていないのだと。
でもそのままでいいわけではなく、自分の行動に落とし込んでいかなくてはと思いました。
まあ、行動と言っても小さいものですが、意識していこうと思っています。
返却するときにまた民俗学の棚を覗いて借りた本。
返却前にレビューを書いておきます。
水俣の水銀汚染による被害にあった弱い立場の人たちの様子が多く紹介されている。
文化人類学者である著者は、アフリカのエチオピアの村に通い、ある家族の歴史や生活を知っていく中で世界の動きが、その家族の営みに影響していくことを知る。「小さき者の生活」がこの世界がどういう姿なのかを映していることに気づく。
そこから著者の故郷である水俣のことを振り返り、日本の近代化が「小さき者たち」にもたらした苦しみや非情さを綴っている。
水俣病のことは、社会科の授業で習った公害の一つとしての知識しかなく、チッソという工場が水銀という毒をそのまま河川に流し、その海に住む魚介類を食べた人々が水銀中毒になった、
ということ以外、私は詳しく知りませんでした。
自作の農作物や獲った魚で生活していた暮らしが、明治になり税金を現金で納めなくてはならなくなり、換金作物がないことで借金せざるを得ず、どんどん貧しくなっていってしまったこと。
昭和に入り、工場ができて大企業が安い賃金でもいくらでも人を雇えてしまうので、ひどい労働環境が改善されることはなかったこと。
近代化は庶民の暮らしを苦しくしてきたことは、この本を読むまで知りませんでした。
水俣病の患者として認可されることが非難されたり、取り下げるよう言われたり。病気で働けず、収入も途絶えたら希望の無くなります。精神を病んでしまう人も出てきます。
本当に地獄のような生活を強いられていたのだと、衝撃を受けました。
ダム巡りでもローカル線旅でも、たいてい工事で亡くなった方への慰霊碑があり、昔の土木工事に事故はが多かったと知っていました。
水俣病のむごさはそういう安全軽視よりももっと酷く、大企業や国が人を人として顧みない扱いをしてきたところにあるとまざまざと感じました。
水俣病は確かにもう過去のことではありますが、庶民の生活よりも国や大企業の論理が優先されていることは、福島の原発事故でも感じています。
今も根本的には変わっていないのだと。
でもそのままでいいわけではなく、自分の行動に落とし込んでいかなくてはと思いました。
まあ、行動と言っても小さいものですが、意識していこうと思っています。
『超ミニマル主義』四角大輔著、『その本は』又吉直樹、ヨシタケシンスケ共著 [今日のつぶやき(books)]
久しぶりに本の感想。図書館で一緒に借りた2冊。
Kindle版しかなかったですが、Amazonのリンクも貼っておきます。
衣類やPC、スマホを軽くする=ミニマルにすることで、生産性を上げ、自分の趣味の時間を作ろう、という趣旨のビジネス書なのだと思います。
すご腕の元音楽プロデューサーの著書。
どこかの書評で読んだのか、だれかのおすすめ本だったのか、図書館に予約して何か月もたってから借りれたので、どうして借りようと思ったのかすっかり忘れてしまいました。
印象的だった内容を抜粋します。
たった一人に届けるモノづくりの技術
知名度が上がると多くのファンができる。するとアーティストは「ファン(みんな)のための歌」や売れる曲」を書こうとする。
一見正しそうだが、「万人受けを狙った商品=曲」は。結局は「誰の心にも届かなくなる」から不思議だ。
「誰か一人のためにつくったもの」は同時に「多くの人の心を震わせる」。
それはきっと、本来、個人的なものである歌を、不特定多数に向けようとした途端、熱量や気持ちが分散してしまうから。
(プレゼンについて、著者の持論)
人間は「1対30」や「1対100」ではなく、「1対1」でこそ本当の力を発揮できる生き物である。
「考え方を変える→思考と行動パターンを変える→それを習慣化する→未来を変える」
「考え方は一瞬。習慣は3週間。性格は一生」
従来の考え方を変えることは一瞬でもできるけれど、行動を変えなくてはならない。
行動を習慣化するには3週間必要。考え方を変え、行動を習慣化することで性格を変えることができる。性格を変えることで人生さえも変えられる、
ということのようです。
著者のように望む未来を手に入れるには、当たり前ですが沢山の努力が必要でしょう。
でもその行動をつらい努力ではなく、希望のためのものと捉えられることが大事なんだろうな。
こちらは予約本を受け取りに行った時、返却された本の中にあって一緒に借りたもの。
王様の命を受けて、又吉氏とヨシタケ氏が世界中の物語を探してきた、という設定。
その本は、で始まる沢山のストーリー。荒唐無稽、ナンセンス、笑い話、?な話などが100話。
好きな話は以下2つ。
「その本は、誰も死なない。」又吉直樹
絵本作家になりたかった少年と少女の話、とても又吉氏らしい話で好きです。
「その本は、ぼくの頭めがけて飛んできた。」ヨシタケシンスケ
戦争に行ったお父さんと同じ部隊で戦った人が書いた物語が、ぼくのところに届いた話。
父が息子に届けたかった話を人に伝えた、その人がその話を本に書いたことで、偶然にも息子が読み、届けたかった相手に届いた。
その奇跡を喜ぶとともに、「たくさんの届かなかった物語」があった(ある)ことに思いをはせるところがいい。
「たった一人の為に書かれた本」と言うのは、丁度直前に読んだ「超ミニマル主義」の四角氏の持論にも通じる。
全くジャンルが違う本にもかかわらず、根本にある考え方が同じではっとさせられました。
Kindle版しかなかったですが、Amazonのリンクも貼っておきます。
衣類やPC、スマホを軽くする=ミニマルにすることで、生産性を上げ、自分の趣味の時間を作ろう、という趣旨のビジネス書なのだと思います。
すご腕の元音楽プロデューサーの著書。
どこかの書評で読んだのか、だれかのおすすめ本だったのか、図書館に予約して何か月もたってから借りれたので、どうして借りようと思ったのかすっかり忘れてしまいました。
印象的だった内容を抜粋します。
たった一人に届けるモノづくりの技術
知名度が上がると多くのファンができる。するとアーティストは「ファン(みんな)のための歌」や売れる曲」を書こうとする。
一見正しそうだが、「万人受けを狙った商品=曲」は。結局は「誰の心にも届かなくなる」から不思議だ。
「誰か一人のためにつくったもの」は同時に「多くの人の心を震わせる」。
それはきっと、本来、個人的なものである歌を、不特定多数に向けようとした途端、熱量や気持ちが分散してしまうから。
(プレゼンについて、著者の持論)
人間は「1対30」や「1対100」ではなく、「1対1」でこそ本当の力を発揮できる生き物である。
「考え方を変える→思考と行動パターンを変える→それを習慣化する→未来を変える」
「考え方は一瞬。習慣は3週間。性格は一生」
従来の考え方を変えることは一瞬でもできるけれど、行動を変えなくてはならない。
行動を習慣化するには3週間必要。考え方を変え、行動を習慣化することで性格を変えることができる。性格を変えることで人生さえも変えられる、
ということのようです。
著者のように望む未来を手に入れるには、当たり前ですが沢山の努力が必要でしょう。
でもその行動をつらい努力ではなく、希望のためのものと捉えられることが大事なんだろうな。
こちらは予約本を受け取りに行った時、返却された本の中にあって一緒に借りたもの。
王様の命を受けて、又吉氏とヨシタケ氏が世界中の物語を探してきた、という設定。
その本は、で始まる沢山のストーリー。荒唐無稽、ナンセンス、笑い話、?な話などが100話。
好きな話は以下2つ。
「その本は、誰も死なない。」又吉直樹
絵本作家になりたかった少年と少女の話、とても又吉氏らしい話で好きです。
「その本は、ぼくの頭めがけて飛んできた。」ヨシタケシンスケ
戦争に行ったお父さんと同じ部隊で戦った人が書いた物語が、ぼくのところに届いた話。
父が息子に届けたかった話を人に伝えた、その人がその話を本に書いたことで、偶然にも息子が読み、届けたかった相手に届いた。
その奇跡を喜ぶとともに、「たくさんの届かなかった物語」があった(ある)ことに思いをはせるところがいい。
「たった一人の為に書かれた本」と言うのは、丁度直前に読んだ「超ミニマル主義」の四角氏の持論にも通じる。
全くジャンルが違う本にもかかわらず、根本にある考え方が同じではっとさせられました。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』『生きて帰ってきた男』読みました [今日のつぶやき(books)]
読んだ本記事を連投。
11月末に読んだ戦争関連本2冊。
Youtubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」で人気の書籍バイヤー、『年間3万冊の新刊を吟味する男』芝健太郎さんが選書していた本、だと思っていたのですが、見つからないので別の人だったかな?
いずれにしても芝さんの選ぶ本は読んでみたくなります。
最近の動画はこちら。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
第9回小林秀雄賞受賞作品。
中高校生(と言っても有名進学校の歴史研究会という優秀な生徒さんたち)に対して、東京大学文学部教授である著者が5日間にわたって行った講義を書籍にしたもの。
中高生向けということで、わかりやすく説明されているのですが、内容的にはかなりボリュームがあり、すべてを理解するのはなかなか難しいです。
序章 日本現代史を考える
1章 日清戦争
2章 日露戦争
3章 第一次世界大戦
4章 満州事変と日中戦争
5章 太平洋戦争
と分りやすい章立てになっています。繰り返し読まないと理解は難しいですね。
日本史をほぼ暗記で乗り切った自分は、どうして戦争したのかをちゃんと理解していなかったので、当時の国と国との駆け引き的なもの、日清戦争の三国干渉が日露戦争への布石になってしまったことなど、当時の政治家の考えや立場での決断が戦争につながっていったのだとわかりました。
また、経済的に豊かになった人が増えたことで選挙できる人が増え、その世論を考慮して決断がされていたことなど、なるほどと思うこともありました。
太平洋戦争は、それでも祖父母や父が多少は知っている戦争です。
また、昔からドラマや物語にもその悲惨さがよく描かれていて、特に末期の無謀な侵攻による戦死者の数は、ひどいとしか思えません。
食料補給もなく、ただジャングルに攻め入って餓死してしまった人々。
また、兵士がどこで亡くなったのかを家族に伝えることが出来ない政府。
そして戦争の責任をきちんととっていない日本政府。
現代の政治家にもつながる残念さを感じました。
『生きて帰ってきた男-ある日本兵の戦争と戦後』
こちらは太平洋戦争で徴兵され、満州へ赴いて終戦を迎えた後シベリア抑留された男性の、生い立ちから戦時中の生活、戦後の混乱期を乗り切り、現在の暮らしまでを口述筆記で描いた本です。
著者は、この本の主人公の息子で、父というごく身近な家族の話を客観的に聞き取っているので、読みやすいです。
一人の男性から見た戦争の姿であり、とても分かりやすいと思います。
また、主人公の出身は北海道なのですが実父の家が新潟にあったことで、シベリアから帰ってきた後あまりなじみのない新潟で暮らしていた時期があり、あの辺で働いていたのかとか結構場所を思い浮かべながら読むことができました。
荻川という、さびれた駅に実父の家があったと書かれているのですが、それは戦後当時のことで、今やベッドタウンとして新興住宅が駅前に立ち並ぶ駅なのにと思いました。
まあ90年近く前なのですから、変わっていて当たり前ですね。
兵士としてより、シベリア抑留されていた2年以上の寒さや飢餓、どうして自分が生還できたかの客観的な見方、日本に戻ってからの職と居住地を転々とした様子、結核の療養時の希望の無さ、高度経済成長の波にうまく乗れて、生活が好転していく様子などなど、一市民の暮らしから見える戦後の日本社会を興味深く読みました。
主人公の正義感が、こつこつと働くことで信頼を得て、仕事が軌道に乗っていったように感じました。
この主人公も「政治家は戦争の責任を取らない」と強く憤っています。
戦後補償から漏れた台湾や朝鮮の人のために、証言に立ったりしています。
激動の昭和を生きた男性の人生としても、感じるものがありました。
11月末に読んだ戦争関連本2冊。
Youtubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」で人気の書籍バイヤー、『年間3万冊の新刊を吟味する男』芝健太郎さんが選書していた本、だと思っていたのですが、見つからないので別の人だったかな?
いずれにしても芝さんの選ぶ本は読んでみたくなります。
最近の動画はこちら。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
第9回小林秀雄賞受賞作品。
中高校生(と言っても有名進学校の歴史研究会という優秀な生徒さんたち)に対して、東京大学文学部教授である著者が5日間にわたって行った講義を書籍にしたもの。
中高生向けということで、わかりやすく説明されているのですが、内容的にはかなりボリュームがあり、すべてを理解するのはなかなか難しいです。
序章 日本現代史を考える
1章 日清戦争
2章 日露戦争
3章 第一次世界大戦
4章 満州事変と日中戦争
5章 太平洋戦争
と分りやすい章立てになっています。繰り返し読まないと理解は難しいですね。
日本史をほぼ暗記で乗り切った自分は、どうして戦争したのかをちゃんと理解していなかったので、当時の国と国との駆け引き的なもの、日清戦争の三国干渉が日露戦争への布石になってしまったことなど、当時の政治家の考えや立場での決断が戦争につながっていったのだとわかりました。
また、経済的に豊かになった人が増えたことで選挙できる人が増え、その世論を考慮して決断がされていたことなど、なるほどと思うこともありました。
太平洋戦争は、それでも祖父母や父が多少は知っている戦争です。
また、昔からドラマや物語にもその悲惨さがよく描かれていて、特に末期の無謀な侵攻による戦死者の数は、ひどいとしか思えません。
食料補給もなく、ただジャングルに攻め入って餓死してしまった人々。
また、兵士がどこで亡くなったのかを家族に伝えることが出来ない政府。
そして戦争の責任をきちんととっていない日本政府。
現代の政治家にもつながる残念さを感じました。
『生きて帰ってきた男-ある日本兵の戦争と戦後』
こちらは太平洋戦争で徴兵され、満州へ赴いて終戦を迎えた後シベリア抑留された男性の、生い立ちから戦時中の生活、戦後の混乱期を乗り切り、現在の暮らしまでを口述筆記で描いた本です。
著者は、この本の主人公の息子で、父というごく身近な家族の話を客観的に聞き取っているので、読みやすいです。
一人の男性から見た戦争の姿であり、とても分かりやすいと思います。
また、主人公の出身は北海道なのですが実父の家が新潟にあったことで、シベリアから帰ってきた後あまりなじみのない新潟で暮らしていた時期があり、あの辺で働いていたのかとか結構場所を思い浮かべながら読むことができました。
荻川という、さびれた駅に実父の家があったと書かれているのですが、それは戦後当時のことで、今やベッドタウンとして新興住宅が駅前に立ち並ぶ駅なのにと思いました。
まあ90年近く前なのですから、変わっていて当たり前ですね。
兵士としてより、シベリア抑留されていた2年以上の寒さや飢餓、どうして自分が生還できたかの客観的な見方、日本に戻ってからの職と居住地を転々とした様子、結核の療養時の希望の無さ、高度経済成長の波にうまく乗れて、生活が好転していく様子などなど、一市民の暮らしから見える戦後の日本社会を興味深く読みました。
主人公の正義感が、こつこつと働くことで信頼を得て、仕事が軌道に乗っていったように感じました。
この主人公も「政治家は戦争の責任を取らない」と強く憤っています。
戦後補償から漏れた台湾や朝鮮の人のために、証言に立ったりしています。
激動の昭和を生きた男性の人生としても、感じるものがありました。
小説『ホワイトアウト』読みました [今日のつぶやき(books)]
文庫版で1998年と25年前の小説ですが、あちこちダムに行ったので読んでみようと手にしました。
出版は1995年、翌1996年の吉川英治文学新人賞を受賞しベストセラーになっていましたが未読でした。
2000年に織田裕二主演で映画化され、そのロケ地が三国川ダムであると、監査廊見学の時に知りました。
そもそも小説の舞台である「奥遠和ダム」が奥只見ダムであることは、映画化当時話題になっていたのでうっすら知っていました。
冬季閉鎖になるスキー場が近くにあることや18kmにも及ぶ素掘りトンネルでしかたどりつけないなど、他にはない特徴がそのままです。
物語は、読みやすい文章で始まるので、すいすいと読めてしまいます。
日本版ダイ・ハードと呼ばれていた通り、テロリストに占拠された巨大ダムを、たった一人で守り、犯人たちを追い詰めるという、スリリングな展開です。
面白かったので、著者の他の本も読んでみたくなりました。
ダムの記述に出てくる監査廊とか天端(てんぱ)とかの用語は、ダム情報サイトでよく見かけるのでふむふむと思っていました。
実際には、冬の奥只見なんて素人がたちうちできる場所ではないと思います。
でも、そこを体力知力で乗り切る主人公、富樫の行動の源は、自分の判断ミスが親友の死につながってしまったのではないか、という悔恨。
そこから犯人たちにとらわれた親友のフィアンセをなんとしてでも助け出す、という闘志になっている熱い物語。
こんな風に未読の面白い物語は、他にもまだまだあるのだろうなと思ったのでした。
出版は1995年、翌1996年の吉川英治文学新人賞を受賞しベストセラーになっていましたが未読でした。
2000年に織田裕二主演で映画化され、そのロケ地が三国川ダムであると、監査廊見学の時に知りました。
そもそも小説の舞台である「奥遠和ダム」が奥只見ダムであることは、映画化当時話題になっていたのでうっすら知っていました。
冬季閉鎖になるスキー場が近くにあることや18kmにも及ぶ素掘りトンネルでしかたどりつけないなど、他にはない特徴がそのままです。
物語は、読みやすい文章で始まるので、すいすいと読めてしまいます。
日本版ダイ・ハードと呼ばれていた通り、テロリストに占拠された巨大ダムを、たった一人で守り、犯人たちを追い詰めるという、スリリングな展開です。
面白かったので、著者の他の本も読んでみたくなりました。
ダムの記述に出てくる監査廊とか天端(てんぱ)とかの用語は、ダム情報サイトでよく見かけるのでふむふむと思っていました。
実際には、冬の奥只見なんて素人がたちうちできる場所ではないと思います。
でも、そこを体力知力で乗り切る主人公、富樫の行動の源は、自分の判断ミスが親友の死につながってしまったのではないか、という悔恨。
そこから犯人たちにとらわれた親友のフィアンセをなんとしてでも助け出す、という闘志になっている熱い物語。
こんな風に未読の面白い物語は、他にもまだまだあるのだろうなと思ったのでした。
『越後三面山人記』(マヤケイ文庫)読みました [今日のつぶやき(books)]
越後三面山人記(えちごみおもて やまんど きと読みます)
この本を読もうと思ったのは、Youtubeチャンネル「ゆる民俗学ラジオ」のこの動画を見たから。
この動画で本の概要は結構わかると思います。
この本は昭和40~50年代の奥三面の山での狩猟や採集の生活、農業と山の生物との様子が、四季を追って綴られています。
既にダムに沈むことが明らかになっていたためか、失われる山村の暮らしが詳細に記録されています。
山で狩猟する人は山言葉(忌み言葉)を使うとか、儀式をしっかり行うとか、歴然と「山の神様」という考え方が根付いていると分かります。
また、栗や山菜、柴の刈り取りにも、何年にも渡って持続可能な採集を考えたルールがあることも分ります。
獲物は山の神様からの授かりものという考え方が、しっかり根付いているところが、日本人の心性につながっているように思います。
農業だけであれば山の生き物は「害獣」というとらえ方になってしまいますが、熊猟が重要な換金物であった山人にとっては、「共存して生きる獣」というとらえ方になることがなるほどと思いました。
著者の田口洋美さんは、民俗学者として初期にこの地でフィールドワークを行ったようですが、その後他の地域のマタギを訪ねたり、狩猟の歴史や考え方に触れることで、より見識を深めたようです。
この本の最後の章の分析はとても鋭く、素人の私にもよくわかる書き方になっています。
この集落の古老が言っていたう「山と人間が半分殺して共存している」ということがどういうことなのか、とても分かりやすく解説されていると思います。
さて、この動画「ゆる民俗学ラジオ」を見るようになった経緯を少し。
ノンフィション作家の高野秀行さんが『語学の天才まで100億年』を出版したころ
ゲスト出演されていた「ゆる言語学ラジオ」の動画を視聴。
ゆる言語学ラジオの面白そうなトピックの動画を視聴していたら、おすすめに出てくるようになったことが一つ。
有隣堂YouTube『有隣堂しか知らない世界』にて、
”年間三万冊の新刊を吟味する男”有隣堂書籍バイヤー芝健太郎さんがおすすめと言っていたこの本を読んでいたことが一つ。
あと、そもそも田舎育ちなので、民俗学の内容が身近に感じられることも関係していると思う。
読んだ本の感想を記事にしなくなって久しいですが、高野秀行さんの本は出るたびに読んでいます。有隣堂の芝さんも、高野本はとても推していました。
実際、高野本はどれも面白いですからね(^^)
この本を読もうと思ったのは、Youtubeチャンネル「ゆる民俗学ラジオ」のこの動画を見たから。
この動画で本の概要は結構わかると思います。
この本は昭和40~50年代の奥三面の山での狩猟や採集の生活、農業と山の生物との様子が、四季を追って綴られています。
既にダムに沈むことが明らかになっていたためか、失われる山村の暮らしが詳細に記録されています。
山で狩猟する人は山言葉(忌み言葉)を使うとか、儀式をしっかり行うとか、歴然と「山の神様」という考え方が根付いていると分かります。
また、栗や山菜、柴の刈り取りにも、何年にも渡って持続可能な採集を考えたルールがあることも分ります。
獲物は山の神様からの授かりものという考え方が、しっかり根付いているところが、日本人の心性につながっているように思います。
農業だけであれば山の生き物は「害獣」というとらえ方になってしまいますが、熊猟が重要な換金物であった山人にとっては、「共存して生きる獣」というとらえ方になることがなるほどと思いました。
著者の田口洋美さんは、民俗学者として初期にこの地でフィールドワークを行ったようですが、その後他の地域のマタギを訪ねたり、狩猟の歴史や考え方に触れることで、より見識を深めたようです。
この本の最後の章の分析はとても鋭く、素人の私にもよくわかる書き方になっています。
この集落の古老が言っていたう「山と人間が半分殺して共存している」ということがどういうことなのか、とても分かりやすく解説されていると思います。
さて、この動画「ゆる民俗学ラジオ」を見るようになった経緯を少し。
ノンフィション作家の高野秀行さんが『語学の天才まで100億年』を出版したころ
ゲスト出演されていた「ゆる言語学ラジオ」の動画を視聴。
ゆる言語学ラジオの面白そうなトピックの動画を視聴していたら、おすすめに出てくるようになったことが一つ。
有隣堂YouTube『有隣堂しか知らない世界』にて、
”年間三万冊の新刊を吟味する男”有隣堂書籍バイヤー芝健太郎さんがおすすめと言っていたこの本を読んでいたことが一つ。
あと、そもそも田舎育ちなので、民俗学の内容が身近に感じられることも関係していると思う。
読んだ本の感想を記事にしなくなって久しいですが、高野秀行さんの本は出るたびに読んでいます。有隣堂の芝さんも、高野本はとても推していました。
実際、高野本はどれも面白いですからね(^^)