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『小さき者たちの』 松村圭一郎著 [今日のつぶやき(books)]

図書館の民俗学の棚で見つけた本3冊を読んで、
遠野物語(口語訳)、『遠野物語』を読もう、新・忘れられた日本人

返却するときにまた民俗学の棚を覗いて借りた本。
返却前にレビューを書いておきます。

小さき者たちの

小さき者たちの

  • 作者: 松村圭一郎
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2023/01/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


水俣の水銀汚染による被害にあった弱い立場の人たちの様子が多く紹介されている。
文化人類学者である著者は、アフリカのエチオピアの村に通い、ある家族の歴史や生活を知っていく中で世界の動きが、その家族の営みに影響していくことを知る。「小さき者の生活」がこの世界がどういう姿なのかを映していることに気づく。
 そこから著者の故郷である水俣のことを振り返り、日本の近代化が「小さき者たち」にもたらした苦しみや非情さを綴っている。

 水俣病のことは、社会科の授業で習った公害の一つとしての知識しかなく、チッソという工場が水銀という毒をそのまま河川に流し、その海に住む魚介類を食べた人々が水銀中毒になった、
ということ以外、私は詳しく知りませんでした。
 
 自作の農作物や獲った魚で生活していた暮らしが、明治になり税金を現金で納めなくてはならなくなり、換金作物がないことで借金せざるを得ず、どんどん貧しくなっていってしまったこと。
昭和に入り、工場ができて大企業が安い賃金でもいくらでも人を雇えてしまうので、ひどい労働環境が改善されることはなかったこと。
近代化は庶民の暮らしを苦しくしてきたことは、この本を読むまで知りませんでした。

水俣病の患者として認可されることが非難されたり、取り下げるよう言われたり。病気で働けず、収入も途絶えたら希望の無くなります。精神を病んでしまう人も出てきます。
本当に地獄のような生活を強いられていたのだと、衝撃を受けました。

ダム巡りでもローカル線旅でも、たいてい工事で亡くなった方への慰霊碑があり、昔の土木工事に事故はが多かったと知っていました。
水俣病のむごさはそういう安全軽視よりももっと酷く、大企業や国が人を人として顧みない扱いをしてきたところにあるとまざまざと感じました。


水俣病は確かにもう過去のことではありますが、庶民の生活よりも国や大企業の論理が優先されていることは、福島の原発事故でも感じています。
今も根本的には変わっていないのだと。
でもそのままでいいわけではなく、自分の行動に落とし込んでいかなくてはと思いました。


まあ、行動と言っても小さいものですが、意識していこうと思っています。
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